「HPLCに空気が入っているみたいで圧力が安定しない」
「不注意で移動相を枯らせてしまったのでどうすればいい?」
「カラムにエアーが入ってしまったらどうすればいい?」
HPLCに空気が入ってしまうとトラブルにつながります。そのまま分析を続けても、空気の影響により正確な分析はできません。
しかし、HPLC操作の経験が浅くトラブルの対処法がわかっていない場合には、どうすればいいかわからず困っている方が多いのではないでしょうか。
- HPLC空気が入ったトラブルで最初にやるべきこととは?
- HPLC移動相に空気が入ったことで起こるトラブルと対処法
- HPLCに空気を入れない対策
HPLCの操作経験が浅く、トラブル対応に不安がある方は必見の内容です。
本記事を読めば、HPLCに空気が入ったときに慌てずトラブル対応できるようになりますのでぜひ参考にしてください。
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HPLC空気が入ったトラブルで最初にやるべきことは?
HPLCに空気が入ったトラブルで最初にやるべきことは、正確な状況把握です。
状況把握で大切になるのか、下記の2つです。
- 起きているトラブルの内容を理解できているか
- 起きているトラブルの内容を正確に相手に伝えられるか
HPLCの空気によるトラブルは代表的なものだけでも5つあります。検出器や移動相の組成によっても起こるトラブルや対処法はさまざまです。
そのため、本記事の中ですべてのトラブルの対処法の詳細までは解説できません。各トラブルごとに解決法を考え、対応する必要があるからです。
トラブルの状況によっては、HPLCの操作方法に詳しい先輩や上司に指導してもらったり、メーカーに問い合わせしたりする必要があります。
HPLCの空気によるトラブルは多岐にわたります。そのため、一人で解決できるトラブルばかりではありません。
分析の日程を遅らせず進めるためには、正確な状況把握をしてトラブルを解決していくことが大切です。
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HPLCに空気が入ったことで起こるトラブル5つと対処法
HPLCに空気が入ったことで起こる代表的なトラブルは下記の5つです。
- 移動相枯渇によるライン空気混入
- 移動相中の気泡による送液異常
- ポンプ内での気泡発生
- カラム内の気泡発生
- 検出器セル内の気泡発生
HPLCの流路の流れに沿って順番に解説していくので、トラブルの検討がつかない場合には順番に確認してください。
1.移動相枯渇によるライン空気混入
移動相枯渇によるラインへの空気混入は、不注意が原因で起こるミスです。不注意の原因は下記のような場合ではないでしょうか。
- 分析に必要な移動相の量を把握できていなかった
- タイムプログラムの動作確認が不十分だった
このようなミスが原因で移動相が枯渇してしまった場合、ラインに空気が混入してしまいパージを行っても通液できない状態になってしまうことがあります。
この場合、状況把握はできているのでまずはHPLC操作に詳しい先輩や上司に相談しましょう。無理に何度もパージを行っても通液できないどころか、ポンプなどに負担がかかってしまいさらなる故障を招く原因になりまねません。
今後同じようなミスを起こさないためには、下記のポイントに注意して分析を行いましょう。
1.必要な移動相の量を把握しておく
具体的には、分析条件の流量×必要時間で必要な移動相を算出します。しかし、ギリギリの量だと移動相がなくなる恐れはあるので、算出した必要量の1.5倍位は用意しておくようにしましょう。
2.夜間分析の場合は朝まで枯渇しない量の移動相を用意する
とくに長時間に及ぶ分析の場合、よく使われるのが夜間分析です。しかし、夜間分析の場合は、途中で移動相の残りの量を目視で確認できません。
そのため仮にタイムプログラムが正常に作動せず、朝まで液が流れていても枯渇しないだけの移動相を用意しておくとラインに空気が入るトラブルを回避できます。
2.移動相中の気泡による送液異常
次に確認したいのは、移動相脱気が不十分で気泡が発生し、送液異常が起きているトラブルです。
見極めのポイントは、下記のとおりです。
- 圧力が安定しない
- 連続分析したときにRTがずれてくる
原因がはっきりせず、圧力が安定しない、RTがずれる場合には移動相中の気泡による液相異常を疑ってみるとよいでしょう。
原因が移動相中の気泡だった場合は、十分に脱気した移動相を準備してしばらく液を流して圧力やRTを確認します。
それでも、なかなか気泡が抜けない場合には、粘度の高い有機溶媒を流すことで空気を押し出す方法もあります。ただし、使用している移動相との相性などを考えて溶媒を検討する必要あるため、自分で選択できない場合には先輩や上司に相談しましょう。
3.ポンプ内での気泡発生
移動相中に気泡がなくても、ポンプを通過する際に気泡が発生する場合もあります。
見極めのポイントと解決法をパターン別に解説します。
【低圧混合グラジエントを行っている】
・見極めポイント
低圧混合グラジエントの場合には、異なる溶媒を大気圧下で混合するため気泡が発生する可能性もあります。
・対処法
低圧グラジエントが本当に必要か検討してください。
低圧グラジエントで問題が発生する移動相組成の場合には、高圧グラジエントが使用できないか検討し、可能であれば変更しましょう。
移動相組成の変更が検討できるのであれば検討して、低圧グラジエントでも気泡が発生しにくい移動相組成にします。
【緩衝液を使用した後】
・見極めポイント
緩衝液の使用後に洗浄が十分できていない場合には、気泡が発生する恐れがあります。緩衝液使用後にメタノールなどを使用して塩が発生すると、サクションフィルタが目詰まりする可能性もあるからです。
・対処法
緩衝液の使用後には必ず洗浄するようにしましょう。
緩衝液の影響でサクションフィルタが目詰まりしている場合に、軽度であればサクションフィルタを洗浄して使用します。洗浄だけでは目詰まりが解消できない場合には、交換するようにしてください。
4.カラム内の気泡発生
カラム内での気泡は、基本的に発生しないことが多いのですが、条件によってまれに発生してしまいます。
たとえば、カラム出口の圧力が低い場所では、カラムオーブンの過熱により気泡が発生する場合があるからです。
・見極めポイント
カラム内に気泡が発生した場合には、移動相の流れが一様でなくなるので、ピーク変形が起こる可能性も高いです。分析結果を確認して、ピークが変形している場合にはカラム内の気泡を疑ってみましょう。
別のカラムが用意できる場合であれば、ほかのカラムで分析を行いピーク形状を比較して判断できます。別のカラムがない場合でも、過去の分析結果があればピーク形状の比較ができるので確認してみましょう。
・解決法
カラムに気泡が入ってしまうと抜くのは難しいのが現状です。ほかのカラムを用意できるのであれば、カラムを代えて分析するのがおすすめです。
カラムをすぐに用意できない場合でも、分析スケジュールに影響が出ないように新しいカラムを早めに発注することをおすすめします。
5.検出器セル内の気泡発生
検出器セル内でも気泡が発生する可能性もあります。検出器付近の移動相はカラムオーブンで加熱されている場合が多く、液温が高いほど気泡は発生しやすくなるからです。
・見極めポイント
検出器セル内で気泡が発生した場合には、下記の症状がみられます。
- ベースラインがガタガタ
- スパイク状・ノコギリ状のノイズ
- ベースラインが振り切れる
- 波形処理が正しく行われない
同じ症状が出ていれば、検出器セル内の気泡を疑ってみましょう。
・解決法
HPLC流路に移動相を流して、セル内の気泡が抜けるのを待ちます。ここでも、どうしても気泡が抜けない場合には粘度の高い有機溶媒を流す方法が使えます。ただし、移動相との相性があるので、使用する溶媒については先輩や上司に相談しましょう。
事前にできる予防策としては、背圧に耐えられる検出器であれば抵抗管をつける方法があります。セル耐圧が低い検出器の場合は、移動相の脱気を十分に行うようにしてください。
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覚えておきたい!HPLC移動相の脱気方法5つ
ここからは、覚えておきたいHPLC移動相の脱気方法について紹介します。HPLCに気泡が入るトラブルは移動相中の気泡から発生するケースが多いため、空気によるトラブルを防ぐためにも、移動相の脱気は十分に行う必要があるからです。
- 減圧脱気
- 超音波
- 減圧+超音波
- ヘリウムパージ
- オンライン脱気ユニット
すぐに導入できるものから順番に移動相の脱気方法を紹介していきます。HPLC分析を今後も行っていくためには、いろいろな脱気方法を覚えておくことも大切です。それぞれ、詳しくみていきましょう。
1.減圧脱気
移動相を入れた瓶にアスピレーターを接続し、減圧して移動相中の空気を出す方法です。減圧中には瓶を揺らして気泡が出なくなるまで減圧を続けます。
目安時間は、5~15分です。
減圧時間が長すぎると有機溶媒が気化して移動相組成が変わる可能性もあります。毎回、減圧時間は一定にして組成が変わらないよう注意しましょう。
2.超音波
水を張った超音波装置に移動相の入った瓶を入れる方法です。
時間目安は、5~10分です。
瓶の蓋は適度に緩めておようにしてください。空気の出口を作るために必要です。
また、超音波だけでは脱気の能力が不十分な場合が多いことも覚えておきましょう。
3.減圧+超音波
アスピレーターで減圧しながら、移動相瓶を超音波に入れる方法です。減圧、超音波どちらか一方よりも短時間で脱気ができる方法となります。
目安時間は、5~10分です。
減圧時間が長すぎたり、時間をかけすぎてしまったりすると有機溶媒が気化して移動相組成が変わる可能性もあります。毎回、減圧時間は一定にして組成が変わらないよう注意しましょう。
4.ヘリウムパージ
移動相にヘリウムガスを送り、移動相中の空気をヘリウムガスに置換する方法です。脱気能力は最も期待できる方法で空気の再溶解も起こりにくいのが特徴です。
瓶の蓋は適度に緩めておようにしてください。空気の出口を作るために必要です。
また、超音波だけでは脱気の能力が不十分な場合が多いことも覚えておきましょう。
毎回ヘリウムガスが必要になるため、コストが高くなります。コストを考慮すると、気泡や残存酸素に敏感な分析など用途を絞って使う必要があります。
5.オンライン脱気ユニット
分析前に十分に脱気を行っても、HPLC接続中に気泡が発生する場合もあります。そのため、オンライン脱気ユニットを使用すると接続中も脱気ができるのでおすすめです。
とくに気泡が発生しやすいグラジエント分析では使用したい脱気方法です。導入していない場合には、導入を検討するようにしましょう。
また、ほとんどの場合でHPLC導入時にセットでオンライン脱気ユニットを購入しているケースがあります。導入されている場合には、必ず使用するようにしましょう。
流速が速い分析になるほど、脱気能力は落ちる傾向にあります。オンライン脱気ユニットがあるから脱気せずに使用するのではなく、従来の脱気方法と組み合わせて使うようにしましょう。
HPLCで空気が入った状態にしないための4つのポイント
HPLCで空気が入らないようにするためには、脱気が大切です。ただし、脱気以外にも空気が入った状態にしないためにできるポイントがあります。
- 液温に気をつける
- 脱気は直前に行う
- 溶媒を入れる瓶は口が広いものを使う
- いつもと同じ方法・時間を守る
今後HPLC分析を続けていく上で、ぜひ覚えておきたいポイントなのでそれぞれ詳しくみていきましょう。
1.液温に気をつける
移動相の瓶の中で気泡が発生するには原因があります。溶存空気が過飽和の状態になっていると、液温が上がるにつれて、気泡が発生してしまう可能性があるからです。
たとえば、倉庫で冷えていた溶媒を使い、液温が上がることで気泡が発生します。また、アセトニトリル+水を混合した移動相は吸熱反応で液温がさがり、液温が上昇する過程で気泡が発生します。
前日に移動相を調整するなど、液温が変化しない方法を検討するようにしましょう。
2.脱気は直前に行う
脱気から分析までに時間があくと、移動相は再び空気を取り込む可能性も高くなります。そのため、なるべく分析直前に脱気を行うようにしましょう。
3.溶媒を入れる瓶は口が広いものを使う
移動相を入れる瓶はなるべく口が広いものがおすすめです。脱気するときに空気が早く出ていくためです。
ただし、口が広いと空気も取り込みやすくなるので分析中は蓋を閉められる仕組みのものをおすすめします。
4.いつもと同じ方法・時間を守る
移動相の脱気は、いつも同じ方法で一定時間に決めておくようにしましょう。移動相組成が変わらないように、同じ条件で行うのがポイントです。
脱気方法がいつもバラバラだと移動相組成に影響して、RTのズレなどにつながってしまいます。とくに順相系の移動相を使う場合には、揮発しやすい溶媒が多いので注意しましょう。
HPLC分析を続けていくためには、基礎知識を積み上げていく必要があります。定期的に講習やセミナーを受講することで効率的に基礎知識から最新情報まで学べます。
講習会やセミナーに参加するメリットは、下記のとおりです。
- 最新の情報が得られる
- 便利な使い方や基礎知識が身につく
- トラブルシューティングの基礎知識がつく
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